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2007年に横浜で<森村泰昌 美の教室、静聴せよ>という展覧会を観た。それは普通の意味での美術の展覧会とは異なるものだったかもしれない。僕にとっては全く良い意味で。それまでにも森村の作品や活動について何となくは知っていたのだが、この時の体験は僕の彼への見方(ややイロもの的なものだと思っていたのだ)が大きく変わるきっかけになった。
さて、それから3年経って、今度は豊田市で彼の展覧会を観た。 全2部構成。 まず「第一部 戦場の頂上の芸術(オトコ達へ)」。 ここでは、20世紀に起こった事件や活動した人物が題材になっている。元ネタの写真などは何処かで見知ったものばかりである。浅沼稲次郎暗殺事件、ケネディ暗殺犯とされたオズワルドの射殺事件、ベトナム戦争の際のベトコン銃殺。作品の方には、いつもどおり、現場に森村が入り込んでいる。だがよく見ると背景が違ったりする。ベトコンの銃殺はもちろん本来ベトナムの地で起こった訳だが、森村は背景に大阪の心斎橋あたりを選んでいる。大阪の街を背景にしているのは、後に展示されているイヴ・クラインでもそうだったし、レーニンの演説でもそうだった。 そのレーニンの演説シーンはヴィデオ作品にされており、それは大阪の釜ヶ崎で撮ったのだそうだ。社会を変革するために労働者たちと起ち上がったレーニンのロシア革命と、それから90年近く経った資本主義社会の日本で日雇い労働に従事する人々が多く住む釜ヶ崎でのレーニン模倣の意味。 また、第二次世界大戦後のニューヨーク、タイムズスクエアで勝利を喜ぶ水兵と看護士がキスをする写真。場所も構図もそのままなのだが、よくみると後ろに居る人物たち(これも森村なのだが)がプラカードをいくつか持っている。そこには日付と思われる数字が書かれている。「1941.12.8」「1945.8.6」「1945.8.9」「2001.9.11」。アメリカが繰り返してきた歴史を、森村は作品に刻み付けている。 更に、巨大な、本当に巨大なサイズで投影されている映像作品、チャップリンの<独裁者>の演説シーンを題材にしたものも圧倒的だった。オリジナルのチャップリンは明らかに自分の時代の「独裁者」ヒトラーをテーマにしていたのだが、森村はここで僕たちの時代の「独裁者」を暴き出す。それはもはや個人が目論む意図的な暴力ではなく、一般の人々の中にある無意識の悪意が対象となる。しかもそれは普段は善良な顔をしているとも。 前後するが、僕が横浜で感銘を受けた三島由紀夫の割腹直前の演説を模した映像作品が今回も出展されていた。やはり凄い。森村は三島の姿を借りながら、森村自身の「日本の現代芸術」への警鐘を鳴らす。これは僕が彼の「表現者」としての凄みを初めて知った作品でもあった。 この三島の映像作品の最後には、映像は無関心な世間が映し出され、一方で、恐らく主人公は孤独な結末を迎えたはずだ。だが、今回20分を超える映像作品として出展されていた硫黄島に星条旗を立てる米兵を題材にしたものでは、主人公は一人ではない。途中、出会った兵士たち(敵兵のようだ)に白旗を掲げた後、最後に主人公は彼らとともにその白旗を力強く打ち立てる。 こうして観てくると、これはもはや美術ではなくて、森村泰昌の世界観であり、思想であり、歴史への解釈である。それを彼はこれらの作品のようなかたちで「表現」する。 かなりのヴォリュームの第一部の後、「第二部 全女優(オンナ達へ)」が続く。 が、こちらは、少なくとも今日の僕にとってはオマケみたいなものだった。もちろん、オトコばかりが出てくる第一部に対して、対を為す存在として、オンナ達が出てきて初めて全体を構成することになるのだろうが、作品そのものが少し以前のものばかりなので、個人的にはちょっと物足りなかったのも事実である。 とは言え、全体をしっかり観れば2時間ぐらいは平気でかかる今回の作品展は、やっぱり圧倒的だと思う。
by mwaka71
| 2010-08-04 22:54
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