こっちに来てまだ訪れていなかった場所のひとつに徳川美術館があった。来週、訳あってそこに行くことになったのだが、この際だから事前勉強を兼ねて行ってみることにした。
前もってネットで調べてみると、今の企画展示は<殿様、ECOを考える>というものらしい。殿様とエコという言葉の組合せがそもそも面白い。
館内に入ってみると、先に常設展が置かれている。武具や刀剣を扱った「武家のシンボル」に始まって、茶の湯「大名の数寄」、書院「室礼」、能「武家の式楽」、奥道具「大名の雅び」と続いていく。特に重文や国宝がガッツリ並んでいる訳ではないのだけれど、いかにも由緒が正しそうな品々があちらこちらで展示されている。2つとない特別なもの(特注品とも言えるのだろうが)ばかりが集まることによって絢爛さを醸し出して、それがまた権威というものに結び付いていたのだろう。
さて、それらの後にようやく企画展の部屋に辿り着く。
ここにはまずさまざまな地図や文書が展示されている。要は尾張藩の領地だった木曽の山中に育つ良質な木々をちゃんと保護していた、ということを明らかにする内容だった。資源としての木材の価値は、当時は今以上だったのだろう。無断伐採については「木一本に首一つ」というぐらいの厳罰が科せられたという。また鷹の巣がある山を「御巣山」として保護したり、今で言うところの「里山」という言葉を最初に生み出したりしたのは尾張藩なのだそうだ。
また、明治時代になってからの尾張徳川家の当主だった徳川義親は、植物学や林政史を研究して、徳川林政史研究所というものを設立したとのこと。なるほど、その意味では名古屋がCOP10をやるのは筋が通っているとも言える。
尾張藩の林政についての展示の後には本草学から博物学に至る数々の資料が並ぶ。美術的な意味はもちろんあるのだろうけれど、それ以上に「知る」あるいは「明らかにする」ということについての、当時の人々の貪欲さが大いに窺うことが出来る。
今回は美術館というより博物館的な楽しみ方をさせてもらったが、なかなか面白かった。