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そう言えば野上弥生子の作品を読んだ記憶が無い。大分県人だし、僕の好きな漱石門下なのだからとっくに手をつけておいて良かったはずなのだが。有名な<海神丸>にしても、あのモデルになった船のことを僕の父が直接知っているだとかいう話(父は現在は臼杵市に属するある漁村の出身である)は聞いていても、やはり読んでいないはずだ。
図書館の棚を眺めていたら、ふと野上弥生子の文庫本が並んでいる場所に目が止まった。<真知子>だとか<迷路>といった長編があった。だが両方とも長編だから手が出ない。ということで、手に取ったのは<大石良雄>と<笛>の2編を収めた1冊。 さて野上弥生子の<大石良雄>。もちろん<忠臣蔵>でおなじみの大石内蔵助の話。とは言え、扱われているのは山科に閑居している時の話であって、多分<忠臣蔵>の中でいちばんユルいくだりである。 一般的に僕らが知っている大石内蔵助という人物は、敵を欺くにはまず味方から、ということをモットーに、深謀遠慮、かつどんな時でも沈着冷静に全てを振る舞うように描かれる。そうした振る舞いは、あくまでも、吉良上野介を討ち果たす、という究極の目的のためだけに存在しているのである。 だが、<大石良雄>で描かれている大石には英雄的な要素は何一つとしてない。家にあってはグウタラしているし、そうでなければ夜遊びをしているか。早く討ち入りを、という急進派からも、拙速は禁物、という慎重派からも、少々冷ややかに見られている大石。かつての部下たちだけならまだしも、家の中でも、あまりに良く出来た「武家の奥方」である妻や、律儀なまでに亡き主君の心遣いをしっかり覚えている長男からも、討ち入りへのプレッシャーをかけ続けられる大石。 彼が欲しかったのは少しでも長い平穏な時間だった。しかしその一方で自分の置かれている立場を考えれば、吉良を討つための行動は、彼自身が音頭をとらなければならないことも理解している。結局、その狭間で悶々とすることになる。そこそこ彼にもプライドはあるのだから、尚更そこで困ることになる。その様子をずっと眺めていくと、何だか少々哀れさえ感じてしまう。まさに「等身大の中年男」の悲哀である。そうして、結局、彼は周囲のさまざまな思惑に絡めとられていくことなる。この絡めとられ方を眺めていると、僕は<ダンサー・イン・ザ・ダーク>のビョークをつい思い出した。 これが実物の大石だったかどうかは分からない。だが、あまりに目的に向かって直線的に(速さは問題ではない)進み続ける英雄としての大石内蔵助像にも僕は疑問を感じる。本当に彼は何の迷いもためらいもなく、討ち入りまでの約一年を過ごせただろうか。英雄とは、ある人物の行動の結果に同調、共鳴した周囲が生み出す虚像である(少なくとも、自称する輩は決して「英雄」ではない)。その周囲からすれば、結果に至るまでの過程も全て一直線上に無駄無く配置されることになる。イレギュラーなものは、こじつけてでもかろうじて線上と言えるぐらいの位置づけがなされる、あるいはそもそも無かったことにされる。そして当の本人の都度都度の実際の意図や考えは大概無視される。即ち、ある程度の人間らしさは否定される。 決して大河ドラマや12時間ドラマには成り得ない大石内蔵助良雄の姿を想像してみることも、僕らにとっては大事なことだと思う。
by mwaka71
| 2008-11-18 01:22
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