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新潮文庫の短編集。
太宰にはずっと興味を持ち続けているのだけれど、実際に彼の作品を読むのは久しぶりだ。どうも最近は長編を読み続ける気力や体力が無いので、とりあえず短編でも、という訳だ。短い分だけ一気に終わりまで読める、という気軽さはある一方で、読み手としては気を抜けない。 さて、収録された作品で面白かったのは、まず表題でもある<津軽通信>。これは、太宰は空襲を避けるために故郷の津軽に疎開し、終戦後にそこで書かれた短編集なのだそうだ。生涯、微妙な関係であり続けた兄との会話を軸にした<庭>、郵便局で度々出会う字の書けない老人を描いた<親という二字>、旧友から聞いた戦時中の体験についての<雀>の3つもそれぞれに味わいがあって興味深かったのだが、それらよりも<やんぬる哉>と<嘘>が素晴らしいと僕は思っている。 <やんぬる哉>は、戦時下に都会と田舎のそれぞれに住む人々の心境のズレをはっきりと示している。一応は太宰の失敗談めいた風に書かれてはいるのだが、むしろもう一人の登場人物の鈍感さを結果的に暴き出しており、読み手としては素直に他人事として読めない。 そして入隊前に脱走してきた夫をかくまう妻を描いた<嘘>。僕はこれを読みながら、ふと北野武の映画(<キッズリターン>だったか)で、ヤクザの親分が自転車に乗った通行人からいきなり銃で撃たれて死ぬ、というシーンを思い出した。その通行人を演じていたのは無名の役者か、さもなくば本当にその場に居合わせた素人さんではなかったか。要は、本当に嘘をついたり周囲を騙すようなことをする人物は、実際にはその気配を微塵も出していない、ということである。太宰の<嘘>で言えば、夫を匿い、それがバレてもなお飄々としらを切り続ける妻がそれである。彼女が他人を騙そうとする意識よりも、彼女を信じて良いのか悪いのかという、こちら側の心理が揺り動かされるさまの方が怖い。 収録された作品でもうひとつ挙げるなら<チャンス>である。これは小説と言うよりはエッセイだろう。しかも恋愛についての、である。太宰はこう書く。 「恋愛とは何か。 曰く、『それは非常に恥ずかしいものである』と。」 そして、その恥ずかしさの源になっているのは性欲であると彼は言う。あからさまと言えば、あからさまだ。だが、一般的な恋愛に性欲が伴わないことの方が不自然だと捉えられるならば、太宰の主張には共感出来る。だからこそ彼はまたこう書く。 「片恋というものこそ常に恋の最高の姿である。」 恋愛感情を抱いていた期間よりも、片想いに似た感情に覆われた日々の方が遥かに長い(長かった)僕にはこれもまた納得だったりするのである(苦笑)。
by mwaka71
| 2008-11-01 21:45
| 今日ふと心に浮かんだ考えは。
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