土屋賢二。東京大学文学部哲学科卒業。現在、お茶の水女子大学、文教育学部長。
立派なお方なのである。
そんなお方の著書なのだから当然重厚なもの(内容も装丁も)と思うだろう。しかし表紙を見ると、これが哲学書のコーナーに置かれていること自体に、大いに疑問を感じるはずだ。何故なら表紙のイラストはあの、いしいひさいち(朝日新聞朝刊の4コマ・マンガ<ののちゃん>でおなじみの、それで足りなければ<ガンバレ!タブチくん>でおなじみの)である。
そして、つけられた帯には大きくこう書いてある。「教育崩壊権威失墜 不可解な大学人事」
どういうことか。
パラパラとめくって中を少しでも読めばすぐ分かる。およそ哲学的とは思えない軽い文体、ほとんど「へ」がつくぐらい強引な理屈、とどまることを知らないボヤキ。
そんな著者が何と学部長に就任! これは一大事。しかし当の本人は「そんなメンドくさいもの〜」と言わんばかりに、腰の引けまくった文章を書く。
「笑いのジェットコースター」とはこの本のようなことを言うのではないだろうか。しかし、笑わせてもらった後で、フッと気がつくのは「常識」を斜めに見ると別の論理が浮かび上がってくることである。それはここでは「笑い」にまぶされているが、一方で私たちの考え方が日常の中でいかに硬直したものかも実感させられる。
そんな有り難い本である。