あなたにとってのドラえもんを表現してください、というのがテーマなのだそうだ。見終わって思い出したのは以前、ピアニスト、高橋アキが作曲家たちに依頼して出来たビートルズの曲をモチーフにした作品(編曲)集のレコードである。そこには文字どおりタダの編曲でしかないものから、元の曲が何だか分からなくなるぐらいに再構築された作品まで含まれていた。今回の<ドラえもん展>も同じことだ。
単純にドラえもんというキャラクターを用いた作品から、もう一歩踏み込んで作家の個人的な思い出との関わりの中から生まれたであろうものまで、いろいろあった。しかし、何と言えば良いのだろう。もうひとつ面白みが足りないような気がしたのは何故だろうか。ドラえもんの世界(コミックやアニメを通して)が既に圧倒的な広がりを持っているのに対して、そこに新たに何か付け加えることは難しい。個人的な思い入れの強さも人それぞれだし、また非常に強いものがあるとしても作家本人の個性とどうマッチさせていくのかもやはり難しいことなのではないだろうか。
大マジメに観るべきものではなかったのかも知れないが、「ドラえもんがいっぱいで楽しいな」というだけのものでもなかったはずだ。美術館で展示するということは、デパートの催事場で行なうことと違う意味を持たせたいというのが企画者の意図であろうから。