西村雅彦、西島千春、酒井はな、西本智実。豪華なスタッフである。
で、面白かったか? と訊かれたら、困る。何かが足りないように思えるのだ。
悪魔(=西島)が冒頭効果音と共に現れて、指揮者(=西本)と演奏家たち(わざわざロシア人である必然性はあったのだろうか)を舞台上に呼び込む。それは、この物語が悪魔の手の内にあることを意味するように思えた。ところが、兵士のなりをした西村が登場すると、彼が語り(物語の進行役)も始めた。これでは役割分担をするにしても、それぞれが曖昧になってしまう。しまいには西島が悪魔の台詞をしゃべる。そうかと思うと後半では西村が悪魔の台詞をしゃべっていたりする。これは、どうにも物語の求心力を弱めてしまったようにしか思えない。特別な演出、装置、衣装などがなくても、語りや台詞は全て西村に、西島、酒井は踊りのみにしてしまった方が良かったのではないだろうか。
この舞台でいちばん輝いていたのは、酒井だ。彼女は出番こそ少ない(前半ちょっとだけ顔を出すのはサーヴィス程度の意味しかない、本当に必要な部分だけで結構)が、文字どおり華がある。
とにかく、豪華なスタッフ陣を活かすも殺すも演出しだいである。