粗読み。
図書館で論理学あたりの棚で見つけて、何となく手に取り目次を読むと、「第3章」として「逆説的生き方ー漱石とその門下生三人衆」という章が立てられている。そこをざっと眺めてみると、案の定内田百閒についても触れていた。なので借りて読むことにした。
最初の方に「アキレスと亀」だとか「ウソつきのクレタ島人」のような、有名なパラドックスについて述べられており、逆説とは何かということが書かれている。次が「人間万事塞翁が馬」のようなことわざに見る逆説。この辺りは納得は出来るが驚く程のことではない。
そして漱石と門下生たちの話。寺田寅彦を僕はあまり読んでいないので初めて知る話題もある。今度久しぶりに読んでみようかとも思う。他の3人(漱石、百閒、芥川龍之介)については、程々に知っていたことだから、うんうんと頷きながら読む。
前半3分の2はかなりすっ飛ばしながら読んだのだが、残り3分の1がそれまでとは趣きが変わって重い話になっていく。「第5章 人間という逆説」「第6章 文明という逆説」という章立て。第5章は天才論と言えば天才論なのだが、それは何かを欠いていたからこその特殊な思考が天才を生んだという感じの話。そして人間は欠陥があったからこそ進化したのではないか、という話に続く。文明の話はその延長線上に生じる。
その文脈で資本主義の発生と発展、更にそれがもたらすであろう文明の崩壊=人間の崩壊という所まで行く。何か壮大な話になっていくので読みながら少々面食らう。ちょっと<パサライト・イブ>を思い出す。別に直接繋がる内容ではないし、僕は映画版の後半をテレビでチラッと観た程度なのだけれど。それにしても本書の始まりから比べると、終わりは恐ろしく重い。安っぽい終末論的パニック映画より余程こちらの方がコワい。