ブログパーツ
カテゴリ
全体 音楽 芸術 書籍 不機嫌な旅人の日記 日々のこと・雑感 昔のこと もの思う日々(第1期) 今日ふと心に浮かんだ考えは。 ブログ開始以前の文章 映画・映像 その他 旅 演劇・舞台 美術 音楽(僕の音楽帖) コレクション 未分類 以前の記事
2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2016年 08月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 10月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2004年 06月 2004年 05月 2004年 04月 2004年 03月 2004年 01月 2003年 12月 2003年 11月 2003年 10月 2003年 09月 2003年 08月 2003年 07月 2003年 06月 2003年 05月 最新のトラックバック
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
<浮雲>が面白かったし読みやすかったので、あまり間を置かずに四迷の他の作品を、と思い<平凡>を。
これもまた面白かった。 ある男(文中では「わたし」)の私小説というか手記というか、そういう体で書かれている。この「わたし」という人物をずっと眺めていくと、平凡とは何かとふと思う。「わたし」がこの文の題名をつけるにあたって「平凡な者が平凡な筆で平凡な半生を叙するに、平凡という題は動かぬ所だ」と考える。 確かに、そうやって書き連ねられていく「わたし」の半生は、エリート・コースから外れていく明治期の若者の姿として、大いに有り得たものであったかもしれない。「わたし」は、幼少時代の思い出を語り、東京に憧れ上京し、うぶなくらいの恋愛感情を抱き、文学に目覚め、世俗から離れることを理想と思うが、所詮は才能の欠如と現実生活の前に妥協せざるを得なくなる。ある意味では確かに平凡だろう。 だが、結局自分の半生の浅薄さを認め、文学の限界を感じ、現実の社会との折り合いをつけていこうとする「わたし」は本当に平凡と言えるだろうか。平凡と非凡との境界線は、ただその真ん中に一本だけ引かれている訳ではなく、現実社会を生きる人間としての平凡非凡と、理想を追求しそれを具現化させようとする存在としての平凡非凡とに、少なくとも分けられるような気がする。ひとりの人間はそれらの総体ではあるから、いずれどちらかの比重を重く見なければならなくなるのではあるが。 実は、真の平凡は却って偉大なのかもしれないと思う。だから「わたし」という人物を評するなら(もちろん文章どおりであれば、という意味で)、平凡と言うよりは中途半端なのである。平凡と非凡の間に中途半端という格が存在するように僕は思う。僕たちの現実の世界では中途半端な人間(僕もそうだ)が、圧倒的に多いのではないだろうか。平均的なレヴェルを取れば、中途半端=平凡になるかと言うと、そうもならないと思う。真正の平凡とは中庸ということだろう。中庸と中途半端は明らかに別物であるはずだ。 平凡という言葉そのものにこだわり過ぎたようだ。 <浮雲>の時もそうだったのだが、四迷の書く文章の内容は思い切りが良くていい。下宿先の従妹に対して恋心を抱いたくだりや性欲のことについて述べているくだり、「わたし」はうぶではあるが、同時にかなりの妄想屋さんでもある。その妄想する内容のくだらなさや、性欲の始末の付け方(もちろん露骨な書き方はしていない、と思うが)をそのまま文字にしているのだ。また、「わたし」が文壇に対して思っていることを述べているくだりも、実際の四迷の思いも反映されているようで、かなり辛辣な内容だ。 結局、「わたし」の半生を眺めてみると、実質的には女と文学しかないように見える。そして、読み終わると、その薄さを他人事として笑えない自分に気付くことになる。
by mwaka71
| 2007-11-17 22:16
| 今日ふと心に浮かんだ考えは。
|
ファン申請 |
||