楳図かずおの自宅の建設について、工事差止めの仮処分の申し立てが求められているのだそうだ。申し立てをした側の言い分は、完成すると「異様な外観になり、閑静な住宅街の景観を破壊する」ということであり、「極彩色の建物は景観利益を侵害する」と主張しているのだという。
ニュース等を見る限りでは、問題とされているのは、特に外壁に施される紅白のストライプらしい。「まことちゃん」の像そのものを飾るかどうかはよく分からない。「まことちゃんをイメージするもの」という言い方をしたときに、それがあからさまな像なのか、単にそれを想像させるような形をしているだけなのか、ということだ。
巷でも意見は分かれているらしい。ただ、賛成する人々の捉え方には理解しづらいものもある。楳図かずおらしくて良いとか、完成したら見物人が集まるからいいとか、彼のような「芸術家」を蔑ろにするのかとか、人の建てる家に文句つけるのか、などなどさまざま。
問題点。もし同じような建物を全くの一般人が建てて、同じような状況になったときでも(もちろん報道のされ具合は随分違うだろうが)、やはり賛成出来るか、ということ。これを言い換えれば、才能がある人間は何をやっても(犯罪でさえなければ)許されるか、ということにも繋がる。また、それは囃し立てられるだけの距離感を保っているから、囃し立てるのであって、いざ、自分の目の前で同じような状況になったときでも喜んで受け入れられるのか(それとも自身でもマネして建てたいと思うか)。反対している人を説得出来るだけの熱意を持てるか、あるいは完全なる無関心をずっと保てるか。
だが、一方で、反対する側、というより、差止めを求めている住民のコメントも、それはそれで首を捻りたくなるものだった。景観に関する権利が認められているのは事実だが、「心身ともに傷つく色彩の暴力、建築の暴力」とまで言い切るのはどうだろう。僕にはその言葉もまた「暴力」的に見えてしまう。ついでに言えば、この申し立てに関わっているのが(今のところ)2人だけなのは何故だろう。
いずれにせよ、互いに落とし所を見つけて妥協することにはなるのだろうが、両者とも「生活する」というレヴェルでのセンスが何か欠落しているように(どちらが多くて、少なくてということでなく)感じられてならない。