「名曲」と言えば「名曲」なのかもしれない。ただ、自分の好みで序列を敢えてつけるなら、少なくともドビュッシーの<海>やガーシュウィンの<パリのアメリカ人>よりも重要な音楽だとは思えない。
レスピーギはローマの有名な4つの噴水を選び、またそれぞれに舞台となる時間帯を設定し、そのイメージに基づいた音楽を書いた。夜明けの<ジュリアの谷の噴水>や夕暮れ時の<メディチ家の噴水>は美しいし、日中の<トリトーネの噴水>と<トレヴィの噴水>は力強く勇壮だ。全体は「静ー動ー動ー静」という構成で、自然に全曲を聴き通せる。そしてオーケストラの響きの多彩さ、そのダイナミックレンジの大きさに聴き手は圧倒される。レスピーギが想定したであろうイメージは、非常に分かりやすく伝わってくる。
聴き終われば、面白かったとは思うし、興奮が醒めていないこともある。その意味では「名曲」なんだろう。
だが、却ってその分かりやすさが、聴いていて手応えを感じない部分だったりもする。あまりに精巧なCGが、リアリティよりも逆に嘘くささを漂わせてしまう感覚に似ていなくもない。音楽を目には見えない有機的な構造物として捉えた場合(別にこれが全ての基準である必要は全くないのだが)、レスピーギはそこに奥行きが感じられない、と言っても良い。
<噴水>の後に書かれた<ローマの松>や<ローマの祭>にしても、極論すれば同工異曲だ。とは言え、<松>のナイチンゲールの音とか、ひたすら派手な<祭>だとか、とにかく分かりやすさを追求しすぎているようにも思えてくる。まあ、結局「あー、楽しかった」と言うことが出来れば、それで良いのかも知れないが。