宇多田ヒカル。
初めて知った頃にはほぼ興味ゼロだったのが、数年間自分の中の評価が右肩上がりを続けて、ついにこの度新譜の時点で手を出すことにした。
実はこれまでの3枚(<EXODUS>は除く)はBOOK OFFとかで入手していた。この2年以内のことだ。いい曲は多い。そこそこのものもあるけれど、基本的に質は高いと思う。しかもそれが10代であることを考えると早熟であることは間違いない。
そして<ULTRA BLUE>は、オリジナルの邦楽扱いのアルバムとしては4年ぶりになるのだそうだ。その4年間、特にCMで流れた作品がここにいくつか含まれている。それらがたった30秒や15秒しか流れていなくても、相当な楽曲であるように思えた経験が僕には何度もある。ちょうど求Eコーラスを聴いた(遅い!)<COLORS>などは、特に素晴らしい。また<Making Love>も名曲と言える。
そのメロディ・ラインは、キャッチーであると同時にまさしく「宇多田節」と言うべき個性的なものだ。またそれに乗っかっている歌詞も、決して抽象的ではないし、彼女の、やはり独特な「ものの考え方」や世界観が十分に伝わってくる。一見普通のことばと書かれているように見えても、そのことばの連なり方によって、大きな感動を呼ぶのだ。以前の3枚のアルバム以上に歌詞は冴えていると思う。
全体を通して聴けば、彼女の最高傑作、という評価も理解できる。
しかし、である。これから宇多田ヒカルは何処に向かうのか、ということを考えると、もっともっと優れた作品を生み出す可能性がある。先週の<トップランナー>で「ノン・ジャンルに進んでいる」という言い方をしていたように、彼女はロックやポップスのフィールドを踏み越えて行けるだろう。僕はそれに期待している。例えばアレンジ。今の路線も大いに結構だが、この<ULTRA BLUE>で、その路線はもういったん極めてしまったのではないか。ビョークがハイパーさを保ちつつ、次第にアコースティックな方へ傾斜していっているようなことを、宇多田ヒカルもやるんじゃないだろうか。面白いと思うんだけどなあ。