今夜は安易に曲を決めてみた。雨降ってるし。じゃ「雨だれ」で。
しかし、聴けば聴くほどに味のある曲だと思う。別に雨が降ろうと降るまいと、関係ない。
出だし、穏やかに何と言うこともなく始まる。同じようなフレーズが二度繰り返され、その間、8小節目までは安定した変ニ長調で続く。9小節目、新しいフレーズ始まる(正確にはその小節の前拍から)。そこに変ハ音が混じる。それまでの安定したところに少し影が出る。変イ短調に移ったからだ。さらに12小節目からのフレーズで変ロ短調に動く。影の濃さがまた少し増す。しかしそこから冒頭の変ニ長調のフレーズに戻る。
実はこの変イ短調→変ロ短調のフレーズはこの先、出て来ない。出て来ないがこれを間に挟むことで、冒頭のフレーズの穏やかさがより引き立つ。
そうした後でショパンが持ってきたのが、48小節間に及ぶ嬰ハ短調の中の8分音符での嬰ト音の連打である。左手の低音部では狭い音域の中で2つの音が蠢く。その上に淡々と嬰ト音が打ち続けられる。そして次第に両者ともに音量を増していく。フォルティッシモに達したかと思うと、またピアノに戻る。これが二度繰り返される。
そして再度、冒頭の変ニ長調に戻っていく。
プロのピアニストからすれば、技術的には難しい曲ではないだろう。だが速過ぎても、遅過ぎても物足りなさを残すはずだ。ショパンという作曲家が五線譜のかたちで遺したものは、単に音符だけではない。それを適切に解釈し演奏しなければ、ショパンが書きながら感じていたであろう、そこにある豊かなニュアンスが立ちのぼってこないのだ。