本当に何年ぶりに聴いただろうか、というぐらいに久しぶりだ。
曲自体は高校生ぐらいの時には知っていたが、当時はよく分からなかった。この曲の元ネタになっているデーメルの詩を字面で追いかけてみても、「あー、そんな男女のことなんだ」ぐらいにしか思わなかった。それは僕がオトナだったのではなく、むしろその逆でウブな?子供だったからだ。今なら分かるか、というとそう単純なものでもないのだが。
男と女が夜の林を歩く。女は男に、彼ではない別の男の子供を妊娠していると告げる。本当は最初の男を愛していたのに、である。女は自分に罪があるという。しかし男はやはり女を愛しており、結局二人は抱き合う。
意味だけとってまとめ直して、相当にはしょるとこんな内容だ。
細かい内容を見れば、かなり情念のこもったものである。それをシェーンベルクは音楽で表しているのだから、出てきたものは当然、濃い。
情念の波が寄せては返し、激しては落ち着きを取り戻す。弦楽合奏版もあるが、オリジナルの弦楽六重奏版で十分だ。それだけでもこの音楽のうねり具合はよく伝わるからだ。そもそもこの「交響詩」的な音楽を管楽器を一切用いずに書こうとしたシェーンベルク自身の想像力が素晴らしいと思う。モノクロの映画であるからと言って表情の幅が狭まるということは無いのと同じことだ。
男と女の会話や周囲の景色をそのまま音で描く、という言い方をすると分からないな。むしろ、それらが醸し出す「気」を音楽で表現すると、こうなるという捉え方をすべきなんだろう。