あまり精神状態のよろしくない時に観ない方がいい映画だったかもしれない。一応フィクションではあるが、ニルヴァーナのカート・コバーンの自殺をテーマにした作品だからだ。
ガス・ヴァン・サントの作品は前に<エレファント>を観たが、あの静かな恐ろしい緊張感はこの作品にも通じている。
およそ100分の上映時間、陰鬱なムードを漂わせながら淡々と人物たちが動く。主人公であるブレイクは最初から壊れた状態で現れる。いつ死んでもおかしくはない壊れ方だ。途中まで彼がミュージシャンなのかどうかすら分からない。
ブレイクがひとりきりになる。ギターを持つ。歌い始める。
「死から誕生までの長い孤独な旅」と歌う。
壮絶である。
研ぎすまされ、傷つきやすい繊細な魂を持った人間の歌である。この歌のシーンのためにそれまでの数十分があると思っていいだろう。