大分に帰って来てから初めて映画を観た。観ること自体2ヶ月ぶりだな。
行った先、そりゃあもちろんシネマ5である。ここは去年の夏以来じゃないだろうか。
さて。
<あおげば尊し>を観た。
まずテリー伊藤。
こんなテリー伊藤は観たことが無い。穏やかな小学校教師、峰岸の役を演じる。もうこの配役だけで作品に対する興味がグッと増す。
峰岸のクラスでは、ある男の子が死体あるいは死に対する強い関心を抱き、問題になる。何故彼はそうなったのか。峰岸にもなかなか理解できない。
峰岸の父親役でありやはりかつて教師だった男の役を加藤武が演じる。彼は末期のガン患者である。余命いくばくも無い彼は在宅で死を迎えようとしている。
峰岸は生徒たちに自らの父の姿を見せることで死を考えさせようとするが上手くいかない。しかし、家庭訪問をきっかけに男の子のことが分かる。彼は彼の実父の死の記憶をたぐり寄せようとしていたのだった。
やがて峰岸の父が亡くなる。その葬儀の場で、峰岸の父のかつての生徒たちが別れを告げるために<あおげば尊し>を歌いだす。
死とは、教育とは、教師とは、そういった複数のラインが交わり合いながら、最後に<あおげば尊し>の場面に行き着く。僕は感動し、泣いた。
実は僕の父も教員だった。もう退職してから10年以上経つが、以前の教え子たちから意外に?慕われているようだ。この点で、僕は父を尊敬する。
今どきは<あおげば尊し>なんて卒業式でも歌わないことが多いらしい。式で歌うことが強制だと感じられるような雰囲気自体、教育の現場の荒廃ではないだろうか。単に勉強を教える者としての教員でなく、人間としての生き方、考え方についてのヒントを与える者としての教師が少なくなっているということなのだろうか。
それはともかく。
ほとんど台詞らしい台詞が無いながら、加藤武の存在感は大きかった。
作品以外のことについて。
久しぶりにシネマ5で映画を観て。
去年、僕は大阪や京都などで、シネマ5と同傾向の作品を上映する、いわゆるミニ・シアター系の映画館をいくつか訪れたが、上映作品の質はもちろん、映画館としての雰囲気の良さまで考えると、シネマ5のレヴェルが非常に高いことを改めて確認した。
大分にはシネマ5がある。素晴らしいことだ。