梅田の大丸でクレーを観た。
それほどの作品数はないが、見応えのあるものもいくつかあった。中でも1932年に描かれた<ピラミッド>に僕は釘付けになった。
まずはとにかくシンプルな構図。上から下に引かれた線が左右に4本ずつ、上部と下部に横に引かれた線が2本ずつ、そして中程やや右側に1本の縦線。それに左下から右上に延びる線が1本、右側から左上部に向かう線が4本引かれている。基本的な構図はそれだけだ。
画面上にあるのは三角か四角がほとんどで、あとは小さな円と円の一部がひとつずつあるだけである。
そして色。画面の縁取り部分こそ暗い色調だが、中心部は黄土色や赤茶色など暖色系でまとめられている。全体として直線的に構成された画面なのに、不思議と緊張感はない。そう感じさせるのはこの色合いだろうし、ピラミッドという明確な物体が描き込まれているからだ。とは言えそのピラミッドにしても単なる三角形でしかないのだけれど。
抽象的でありながら具象的でもある、その境界線上にある作品だと思う。と、ここまで書いて思い出したのは、全然違うものだが福田平八郎の竹を描いた作品だ。何本かの竹の節の部分をクローズアップし、そこに緑や青色をのせただけのものなのに、そこにあるのはやはり竹なのだ。
純粋な線と色を簡潔に楽しむ、その面白さがクレーにも平八郎にもあると思うのだ。