勧められて池谷裕二と糸井重里の対談書である<海馬>という本を読んだ。池谷は多分僕と同い年の脳科学者である。そしてタイトルの海馬とは、脳の中で外部からの情報の選別を司るもの、なのだそうだ。
一見話が変わるようだが「生き方指南本」のようなジャンルが、何故か書店には存在する。結構怪しげな雰囲気なので近寄らないのだが、結構売れているのだろう。読んでいないから憶測に過ぎないが、そのテのものはたいした裏付けも無く「だから人生ガンバロー」と言っているような気がする。重ねて断っておくが、あくまでも、気がする、のである。
少なくとも<海馬>は違う。素人である糸井が、脳の専門家の池谷と話をし、さまざまな方向にとっちらかったり、素晴らしい適切なたとえなどがポンと出て来ることで、脳が如何に生命上前向きに指向しようとしているかを非常に分かりやすく説いてくれるのだ。つまるところ、科学的な裏付けのもとに、より素敵な人生を歩める可能性を示してくれるのだ。
30歳からでも頭は良くなる、とか、脳は疲れない、とか情報整理のために睡眠は大事(僕も反省したい)とか、「つながりの関係」の重要性など、目から鱗の話が次から次へと現れる。
しかし「つながりの関係」ということは、レヴェルはともかくとして僕も無意識的にやっていることに、読みながら改めて気づかされた。あ、これ面白いなあ、と思ったものに付随する情報から手探りで別の事柄に接近してみる、という方法である。僕の音楽性はまさにその集大成である。だからこそジャンルを超えてしまっているのだろう。
自分の可能性、いや本書の中の言葉で言えば「可塑性」をこれからも大いに磨きたいと思えたし、自分自身の考え方の方向性の一部が間違ってはいないことを再認識できた。
読んで良かった。