なんばの高島屋で三岸節子展を観る。
入口入って直ぐにあった自画像がいきなり強烈な印象を抱かせる。特に20歳の時のもの。その眼差しの強さ。
その後には具象とも抽象ともつかない、しかしそこにあるのは確実に彼女の心象風景の数々だ。それらに迷いはないが苦しみがあるように思えてしかたがない。これは語弊のある表現かも知れないが、そう感じずにはいられないのだ。描かれるべきものは、はっきりとしている。だが彼女のイメージと、現実に描かれるべきものとを一致させるための闘いがキャンバスの上で繰り広げられているのだ。それが重ね塗りや強い筆遣いとして現れている。魂で描く、というのはまさにこのことだろう。
この展覧会ではヨーロッパに渡って描いた風景画が多く展示されていた。ただこちらは素晴らしいとは思うのだが、彼女としては最上のものかどうかは分からない。
一方で亡くなる年(94歳)に描いた桜の木の絵がまたしても圧倒的だ。本当に最後まで創作者として衰えなかったことがよく分かる。
生命力と存在感を敏感に捉えることが、ものの表面上だけではない本当の美に迫ることであることを三岸節子の作品は教えてくれる。