ときどきのことだが、昼休みに中央町商店街の某古本屋に立ち寄ることがある。これまでにも、そこで掘り出し物(もちろん自分にとっては)を見つけてきたが、これも自分なりに良い買い物をしたと思う。
赤瀬川原平の影響もあるのだが、浮世絵、特に広重や北斎は大好きだ。その魅力をひとことで言えば、まずは構図の大胆さ、ということになるだろう。今回北斎の<富嶽三十六景>も同時に入手したのだが、ここでは広重の<名所江戸百景>(この集英社の浮世絵大系のシリーズでは二巻に分かれていた)についてひとこと。
広重の「名所江戸百景」は、<お江戸でござる>で杉浦日向子が江戸の風俗を説明する際にもよく使われていたと思うが、細かい所までじっくり見ると実に面白い。ほとんどイラストのようにさらりと簡単に書かれた人物も、却っておかしみを感じるものが含まれていたりするのだ。
羽田。とても現在空港がある所と同じ場所には思えない。しかし、ポイントは何よりもおっちゃん(多分)の腕とスネである。頭も胴体もわざと外した構図、これを大胆と言わず何と言う、と思わざるを得ない。これもやはり職場のスタッフに見せたら、学校の美術の授業でこんな構図の絵を書いたら怒られるのでは、と言っていた。確かに。
王子。これはイメージ、幻想の世界だ。狐が集まっている。これでは分かりづらいだろうが、狐火がぼんやりと浮いている。こんな光景を実際に広重が目撃したどうかは知らないが、おどろおどろしさは超えた美しさをつい感じてしまう。