この作品は痛い。人を愛することの幸福と不幸が率直に描かれているからだ。見方によっては、介護士(看護士?)の彼は単なるストーカーである。ただ、それで終わるべきではない。ここで描かれていたのは彼の変態性(やや表現がキツイが)というよりは、客観的に見て、恐らく報われることのない彼女への愛情、その哀しさだと思う。そこには、それが報われないものという自覚が彼にないことも含まれる。
彼自身は彼女と接しているだけで、たとえ彼女の意識がなかったとしても、幸福である。むしろ意識がなかったから、というべきか。だが、とにかく周りはそれを歪んだ愛情としてしか見ない。まあ現実的には当然だろう。
しかし、私たちは自分の愛する人に対して、彼程の想いを持てるだろうか。言葉を交わすことも出来ない、表情を窺うことも出来ない、そういった反応が一切ない相手を、私たちはそれでも愛せるだろうか。自分の都合の良いように解釈することも可能だが、それを4年も続けることは、少なくとも私には出来ない。出来ないからこそ彼の姿は異常に映る。
深く人を愛すればこそ、それが報われないと知った時の傷は大きい。
痛い映画だ。