ここのところずっと気になっていた曲である。前から知ってはいた曲だが、最近になってようやく聴ける身体になった、ような気がする。
15の独奏楽器で単一楽章、演奏時間にして約20分。コンパクトと言えばコンパクトだ。だがスコアを見ると非常に対位法的で旋律が複雑に錯綜している。単一楽章とは言っても、大きく分ければ「急ー急ー緩ー急」の4部と見ることも出来るから、音楽の流れていく方向そのものまで見失うことはない。そして、トランペットやティンパニなどを欠いた編成ではあるが、なかなかにドラマティックで起伏に富んだ音楽だ。高揚や停滞、漸増や漸減など、さまざまに音楽は表情を変えていく。
実はこの作品に最初に引っ掛かりを感じたのは、何かマーラーの曲にあったものと似たフレーズを意識したからだ。しばらくどの曲だったかを考えたら、マーラーの交響曲第6番の第4楽章だった。そう思ってシェーンベルクを改めて聴くと、マーラーの第5、第6交響曲の雰囲気に通じる所がいくつもあるように思えてきた。どちらかと言えば第6の方だろう。
ただ、シェーンベルクがこの曲を書き上げたのが1906年の7月。一方のマーラーの方はエッセンでの世界初演が同年の5月、そのひと月前にウィーンでリハーサルを行っている。また、作曲自体は1904年には一旦完了していたらしい。とは言え、果たしてシェーンベルクが室内交響曲を書くまでにマーラーの第6を知っていたかどうかは分からない。とりあえず、当時のシェーンベルクはマーラーに心酔していたから、マーラー(のそれまでの作品)からの影響そのものが無かったとは思えない。
いずれにせよ、マーラーの退廃的な美しさから情緒的なものが取り除かれたような、先鋭的な混沌の世界がこの必ずしも大きくはない作品の中で展開されている。