とにかく何でも、という訳ではないのだけれど、僕はテリー・ライリーの<IN C>のレコードを見かけると気になってしまう。とりあえず手元にはライリーの初録音盤(COLUMBIA)はもちろん、中国楽器ヴァージョンや韓国楽器入りヴァージョンのCDがある。
<IN C>は、任意の人数の演奏者が、53のフレーズを順に、それぞれ任意の回数を繰り返していく、という作品だ。だから同じ演奏を二度行うことはまず無理だろうし、そのバラバラのフレーズが混じり合って、しまいには音の洪水に身を委ねることになるのが面白いのだ。使う楽器すら決まっていない。だから音色の変化だけでも十分に楽しめる。
さてそんな<IN C>。今回僕がつい入手してしまったのはアシッド・マザーズ・テンプル&ザ・メルティング・パライソ U.F.O(Acid Motherゥりらしい(もともとはアナログ盤が 2001年に出ていたそうだ)。久々に足を運んだ渋谷のタワー・レコードで長考の挙げ句に購入した。
シンセとドラム、ベース、ギター、ヴィヴラフォンなどによる演奏はまさしくロックのノリだ。9番目のフレーズ(3分過ぎ)くらいまではまだ大人しいが、そこからドラムがドカドカとリズムを打ち込み始めると一気に怒濤の音響体へと発展していく。そんな調子で15分程続いた後、最後はヒヨーンという感じの電子音で終わる。あっさり書いたけれど、かなり轟音が続くから、全体が20分程度とは言え、聴き疲れはする。フロックなノリも十分に楽しめるのではあるが。
ところでライナーノートには、この演奏が「53の音型を演奏者各々が任意の回数反復演奏するという唯一のルールさえ守られていない異端の演奏」と紹介されている。前述のように確かに音型の方が聴き取りづらいけれど、僕の耳にはちゃんとそのルールは守られていたように感じられた。その意味では異端の演奏ではないだろう。ただ、これだけ、ほとんど無限とも言える可能性を持った作品なのだから、もっと更にいろいろなヴァージョンが現れてしかるべきだ。それがまた<IN C>の面白さだと思う。