押井守監督作品。
僕は周囲から何テンポか遅れているので、押井監督作品は多分初めて観る。つまり<甲殻機動隊>を知らない。前に「観るべき!」と言われた、ような気がするのだが。
戦争後の焼け野原の時代に現れた「月見の銀二」と呼ばれる男に始まる、立喰師たちの歴史を、戦後日本の食文化と絡ませながら紹介していく、というつくりだ。立喰師というのは、要はタダメシ喰いを目的とした輩(やから)である。もちろん、無銭飲食という犯罪者は居ても、立喰師というプロの仕業師は現実には存在しない。はずだ。
さて、観始めて思い出したのは、かつてフジテレビの深夜番組として一世を風靡した<カノッサの屈辱>である(年代がバレるなぁ)。<カノッサ>ではモノや制度の歴史を、日本史や世界史にあてはめて、半ば強引に(とは言え、説得力が無かったとは言わない)解説していくところがとても面白かった。その歴史とリンクさせる強引さ(悪いとは思わないが)が似ている、と思ったのだ。
ただ、正直ツラかったのはナレーションの言葉数、即ち情報量が多く、あえて難しめな単語をたくさん並べたために、耳に入ってくる言葉を頭の中で文字に置き換える作業が結構大変だった。白状すれば、途中少し寝てしまったな(もちろん作品のせいだけではない)。
面白くなるのは、昭和40年代後半のエピソードとして扱われる、牛丼の「予知野屋」対「牛五郎」あたりからだ。ファーストフードというもののシステム(大量生産=安価提供=大量消費)を破壊する存在としての立喰師たちとの対決は、オーヴァーに言えば戦後日本の食文化の危うさを完全に別角度から捉えたものとも言える。もっとも、話がそこまで飛躍すべきかどうかは分からん。
100分強、映像としてはユニークで面白いが、ストーリー的にはどうか。僕には、どう評価して良いのか困る作品ではあったのだけれど。