不思議な映画である。
現代のアメリカ南部→メキシコが舞台、のはずだ。にも関わらず、そうは見えない。ただでさえ荒涼たる田舎の景色だらけである。自動車も現れるが、それ以上に馬とのシーンが圧倒的に多いからだ。しかしそれは小さなことだ。
トミー・リー・ジョーンズ演じるピートの復讐劇か。というとそんな単純な話ではない。単なる復讐ならもっと早い時点でメルキアデスを殺したマイクを殺しているはずだ。しかしピートは殺さなかった。一方で最後の最後までマイクを許さなかった。
ピートはメルキアデスを心の底から信頼していたし、それを貫こうとした。その意味で愚直である。愚直ゆえに正気の沙汰でないことをやろうとする。
どんどん状態がひどくなっていくメルキアデスの死体と延々と旅を続けるピート(とマイク)の姿は、しかしそれでも悲壮感よりも、寓話的な滑稽ささえ漂う。
実際には虚言だったかもしれない「約束」をとにかく果たしたピートは何処に行くのだろうか。
そう思いながらこれを書いていると、テレビで宇宙人ジョーンズがBOSSを飲んでいた。