パリ・オペラ座のドキュメンタリー映画。まあ、バレエ団がメインだろうとは思っていたが、まずは観ておこうと思った。
ネットで映画情報を見てみると、監督がフレデリック・ワイズマンであることに気が付いた。あー、これは長くなるな、と思っていたら、案の定、上映時間160分とある。覚悟を決める。
僕は特にバレエ・ファンという訳ではないので、ダンサーの名前はほとんど分からない。しかし、それは鑑賞する上で全く気にならない。実際の公演の様子は後半に少し出てくるぐらいで、ほとんどは稽古のシーンである。<くるみ割り人形>も含まれているけれど、コンテンポラリー作品の方が多く扱われている。とは言え、これが素晴らしい(<ジェニュス>と<メディアの夢>は圧巻)。単に振付家がダンサーに対して一方的に指示を与え続けるだけでない。振付家同士の意見の相違の現れるシーンもある。完成度を高めようと、ひとり稽古場で真剣に自分の動きを何度も繰り返すダンサーの姿も収められている。
ところで、バレエに限らず舞台公演というものは出演者だけで出来るものではない。当たり前のことなのだけれど。ということで、裏方さんである。照明や衣裳、更に清掃さんも登場する。そして制作スタッフ。何と言っても芸術監督。ダンサーからの配役変更の依頼(クレーム処理っぽくもある)に対応したり、大口スポンサーとのレセプションのセット、ダンサー達の地位(労働環境)向上への取組み、芸術上の成果を挙げるための取組みなど、バレエ団に関わることの全てを彼女は負っている。それだけの責任と権限とが表裏一体になっているとも言える。
そして全体を通して感じるのは使命感である。作品に対しての使命感であり、芸術そのものに対しての使命感でもある。それを培ったのは個人のプライドもあるだろうが、そこには伝統とか歴史というものも大きな影響を与えているのだろうと思う。
そんなことを考えながら観ていると、160分の上映時間はさほどに長くは感じられなかった。