ショスタコーヴィチの交響曲全15曲の中でも、聴く方にとっていちばんハードなのはこの14番と13番<バービィ・ヤール>あたりじゃないだろうか。因みに僕自身にとっては3番と12番がツライ。聴けないことはないが、彼としてはどうにも志が低いような気がしてしまい、ついこっちが恥ずかしくなるので。
話を戻す。14番も13番も声楽入りで、扱っている内容も非常に重い。この「非常に重い」という表現も、今は簡単に書いたがその濃密さは尋常ではない。13番が当時のソ連社会の暗部を白日の下に曝すものだったのに対し、この14番は「死」を扱う。
死が、ひとりの人間にとっては人生の終着点でしかないけれど、誰にでも同じように訪れる訳ではない。だからこそショスタコーヴィチは単に悲劇的にそれを描くばかりでなく、強烈な諧謔をもっても描いたし、ひたすら沈鬱に表現してもいる。
全11楽章、全くと言って良い程救いのない暗さに覆われている。管楽器を使っていないが、冴え冴えとしたリズミックな楽章を含んでいるおかげで、響きによる表現の踏み込みも鋭い。
ひたすら苦い音楽である。しかしこの苦みは、同時代の西欧の前衛音楽よりも人間の真実に到達している。