民俗学関係のものは読み出すと面白い。
<塩の道>は文字どおり、昔の人々がどのように塩を調達していたか、ということについて紹介した本である。
日本は島国ではあるが、当然のことながら海に面していない地域も多い。普段僕は塩の重要さをすっかり忘れているが、生きていく上では必要な要素のひとつだ。今でこそスーパーやコンビニでさまざまな種類の塩を買うことが出来るが、以前は専売制だった。思い出してみると、確かに僕が子供の頃は確かに専売公社というものが存在していたなあ。
つまり、それだけ塩の供給を政府がある程度コントロールする必要がかつてはあったということだ。では専売ではなかった江戸時代以前はどうだったのか。
面白かったのは、山国の人々も大昔は自分で海まで出かけて塩を自分たちで作っていたそうだ。それが、海辺の人に頼むようになり、そこそこの大量生産になってくると山間部への流通経路が出来始める、ということになる。そして運搬手段も馬ではなくて牛だったそうだ。細い山道も牛なら荷物を運べるとか、野宿が出来るとか、道端の草を食べてくれるとかが理由らしい。
また、昔は山間部に住む人は質の落ちる塩をわざと買っていたという。そういう塩にはニガリが含まれており、それを使って豆腐を作っていたのだ。
などなど、塩にまつわるさまざまな話が、全く新鮮に思えたな。宮本常一で前に読んだ<忘れられた日本人>もフィールドワークから得られた成果をまとめたものだったが、やはり「膨大な見聞と体験」に基づいているだけあって、文章になっても実に読みやすい。
歴史上は無名の不特定多数の人々が、時間の流れの中で次第に作り上げていったものを、後世の者がさまざまな角度から読み解く面白さが、民俗学の魅力なのだろう。それはまるで推理ものでもある。