ブラームスの弦楽六重奏曲で有名なのは第1番の第2楽章だ。主題と変奏で出来ており、その情熱的なテーマは多くの人を魅了して止まない。しかし残念なことに、この第1番、他の楽章がイマイチなのだ。
その意味で、総合的に僕は第2番の方により強い愛着を覚えている。
ゆらゆらとした出だしから、長調とも短調ともつかぬメロディが上昇していく、この出だしだけでも素晴らしい。幅広く歌に満ちた第2主題ス女性アガーテ・フォン・ジーボルトを表しているという。
自らの恋愛にけじめをつけるため、とは言え、決して嫌いになった訳ではない相手のことを思う気持ちの痛さ。これはそういう体験を実際にした人でないと分かるまい。
六重奏曲の展開部はまさに劇的である。激しく、昂り行き切ったかと思うと再現部が始まる。ト長調という表示がウソのように思える。
第2楽章は一種のスケルツォだが、泣き濡れている。センチメンタルなブラームスである。第4楽章まで行くと、何事もなかったかのような明るい終わり方を迎えるのだが、僕にはどうしてもその第1楽章のヘヴィさがいつまでも心に残って仕方がない。
人と別れるということは簡単なことじゃない。