ビッグ・バンドをハシゴする。
スタン・ケントン以上に僕が好きなビッグ・バンド。これはもう文句なしにドン・エリスだ。変拍子フェチ(笑)にはたまらない。
どうですか、17拍子とか33拍子ってのは?
笑い通り越して呆れるわなあ。ドン・エリスは1960年代半ばに自分のバンドを立ち上げて、それから亡くなるまでの10数年間に質の高いアルバムを何枚も遺している。彼の訃報を聞いた、かの中山康樹(評論家/多分世界一のマイルス・デイヴィス・ファン)は涙したという。本当かどうかは知らんが、それぐらいに評価していたのは間違いない。
だが、一般的な評価はまだまだという感じである。なかなか進まないCD化がそれを物語っている。
でもね、インドやブルガリアあたりの複雑なリズムをビッグ・バンドでバシッとキメて、さらに電気音響的な処理をしたサウンド(これは同時代としてはマイルスに匹敵すると思う)、これは聴けば納得のカッコ良さ。
そんなエリスの音楽で、実は無意識的に多くの人が聴いているのは映画<フレンチ・コネクション>の音楽なんじゃないだろうか。ジーン・ハックマンがめちゃくちゃ渋く刑事を演じ、麻薬組織と対決するという大傑作だ。オスカーもいくつか獲ったんじゃないかな。で、その音楽を担当したのがエリス。
映画音楽だから1曲1曲はそんなに長くない。だが、ジャズと現代音楽的なノリが融合して、緊迫感を見事に高めている。因みにストリングス入りの曲も多い。この中で最高にイイのは、ジーン・ハックマンが敵役を尾行するシーンで使われた音楽だ。低弦がリズムを刻み出す。上にヴァイオリンがスーッと乗っかる。次第にリズムが錯綜し出す。<特捜最前線>を思い出させるようなピアノが加わる。そしてエリスのラッパが颯爽と登場。バンド全体がスリリングにスウィングする。何度聴いてもカッコいい。
<フレンチ・コネクション>のサントラはあるにはあるが、そんなに出回っていないのが惜しい(僕が持っているのはオークションで入手した3000枚限定のCD)。まあ、なんならDVDで映画そのものと合わせて聴く方がより面白いのでは。