関西に来て初めて映画を観た。映画自体1ヶ月ぶりだ。
神戸では最終上映の始まるのが、僕の感覚では早いし、レイトショーもそれ程多くないように思う。正確に言えば、観たい映画で遅い時間のものが少ないということだ。改めてシネマ5(大分ね)に感謝することしきり。
さて。仕事帰りに観られる映画、もちろん観たい映画。あった。
神戸アートビレッジセンターに向かう。もちろん初めてである。新開地を降りて徒歩3分で到着。目指したもの。
<ニア・イコール舟越桂>というドキュメンタリーである。舟越桂は、人の上半身を独特な静謐感で刻む彫刻家であり、この映画は彼の創作の現場を3ヶ月に亘って撮り続けたものだ。
軽く驚いたこと。それは、思いのほか舟越が制作中に陽気さを見せることだった。カメラが回っているからではない。口笛を吹きながら鑿を振るい、アトリエのテレビで映るサッカーを見て手を休める。だからといって決して遊び半分ではない。
彫刻は職人的な動きをも要求されるものだ。手技と言っても良い。そういう部分と、デッサンで得たイメージを如何に立体化するか、また打ち始めてその実際に現れる姿をどう彫り進めていくか、は同次元の話ではないだろう。しかしバラバラにも成り得ないものだ。
目、視線の向き、首のひねり具合など、素人にはごくごくわずかなことと思えることに、苦吟しながら最上のあり方を求める姿、あるいは自分のやったことに対する自信の不安定さに悩む姿は、芸術家以外の何者でもない。一見、心の底から悩んでいるようには見えないのだが、制作日数のかかり方を見れば、丁寧に(表面上のことだけではなく)作品と向き合おうとしていることがよく分かる。
彼の作品の特徴として目、視線を外すことは出来ない。遠くを見ているその視線は、遠く彼岸までも見つめる舟越の視線でもあるのではないだろうか。