ようやくホルヘ・ルイス・ボルヘスの<伝奇集>を読み上げた。短編集だが、どうもここのところチンタラ読んでしまう悪癖がついてしまっているので。
感想。幻想的、というと何かウェットなものを想像してしまうが、ボルヘスの場合、全く逆で徹底的に乾き切っている。じゃあそれは悪夢かと言えば、そういう訳ではない。忌まわしいものとは違う。ただ閉じられた空間であることに対する閉塞感はある。その空間が無限の迷路だからだ。僕は昔から迷路っていうのが苦手でね。
映画<CUBE>から不条理さと恐怖を抜いた感じ、と言いたいのだが、却って分かりづらいか? それとも、現実の中に、ボルヘスの作り出す虚構=非現実の楔が打ち込まれることで、生まれる現実の裂け目の世界、とでも言った方が良いか。
もちろんボルヘスの途方も無い知識が滲む文章に困惑しながら読んだ。とは言え現実の裂け目から見える(=読み取れる)世界がスリリングで、興味深く思えたのは言うまでもない。