どうしても気になっていたので、思い切って山口市まで足を運んだ。フィリップ・ジャンティ・カンパニーの来日公演<バニッシング・ポイント>(山口情報芸術センター)を観るためである。
結論から言おう。僕が今までに体験したパフォーマンスの中でも最高の公演だった。舞台という空間をフルに、いや120%に使って、視覚的なトリックと想像力に溢れ、そして緻密に組み立てられたスリリングでエキサイティングなものだった。三次元上で四次元を体験してしまったかのような感覚すら覚えた。
沈みゆく船?から深海?へと場面が移り、潜水服を着た人物が、宙づりで空間を泳ぎ回り始めた時点で、僕は「ああ、これはスゴイものを観てしまっているんだな」と興奮していた。その後も、とにかく驚きの連続だった。観念的な要素もあるはずだし、舞台上の流れでその全てを理解できたとは思わないが、そういうものを表現しようとした時に、からりとした雰囲気のまま通せているのは個性なのだろう。日本人だったら多分無駄に重くなるところが、彼らは軽やかだ。
とにかく、僕が観たもの全てを言葉で表現できないことは残念。それぐらいに良かった。
ところで会場について。多分350人前後のキャパで、多分6〜7割の来場者。これは相当に運営側の経済的な負担は大きいはずだ。本当に覚悟を持ってこうした舞台公演を行っているのだと思う。ただ、公的な機関の宿命として税金との絡みは常に役所から言われるのだろう。どこまで今のような大胆な(山口という街の規模や、これまでの文化行政の流れから見た際に、内容面であまりに先に行きすぎているのではという、同業者としての余計な心配を含め)公演が出来るのだろうか。当然、物理的には不可能なので、気持ちだけでも応援したい。