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随分と久方ぶりの筒井作品。
設定が風変わり。作中の日本は映画が社会の根幹を担っていて、世の中は全て映画を中心に動き、映画が至高の存在と看做されている。1本の映画製作が国の政策に大きな影響を与えるだけでなく、政策の方が映画に追随するぐらい。映画に関わる仕事は、社会の中で最も敬意を払われており、全国民の羨望の的である。もちろん、映画人は最上級の知性を備えた人間である。因みに、このあたり、筒井康隆自身の映画論や演技論なども含まれているようで、これはこれで非常に面白く読める。 とにかく、映画人、文化人からすれば、あり得ないぐらいに幸せな環境である。芸術至上主義の極みである。だが読み進めるうちに、全ての価値観があまりにも映画基準であることに違和感を覚え始めた。かの「将軍様」の国を思い出した。「将軍様」は大の映画好きで、確か自らも映画製作に関わっていたはずだ。全体主義という同じニオイがする。 そう思っていると、主人公の「おれ」が、自分の幸福さに疑問を感じ始めた。作品の後半、彼は仲間たちとその疑問についての討論を始める。自分たちの世界のパラレルワールドはどんなものか、ということを。それは映画大国ではなくて、経済大国であろうと彼らは考える。経済活動が全ての根幹となり、人々は経済の発展を最上位に置き、消費に汲々とする。そういう社会での中心人物は実業家であり政治家になる。全ての文化活動は「分かりやすさ」を基準とするため、無条件に横並びとされる。平等への意識は極端なものになり、芸術家や才能のある人物は否定的な扱いを受ける。 その部分を読み始めれば直ぐに分かることだけれど、それって結局、「現実の」「現在の日本社会」のことじゃないか。前半の「理想化された社会」の真反対に描かれている。描かれている、と言ってもやはりこれは僕たちの「現実」を、ある一面からかも知れないけれど、やはり反映しているだろうから、架空だとは思えない。 「人間っていうのは環境に順応していればいるほど、他の社会を自分たちの社会同様に良きものとして認めるということは絶対にない。そして彼らは(中略)まるで悪夢のような社会だ、われわれはそんな社会に棲んでいなくてよかったと」というセリフが終盤に現れる。「おれ」の属する映画大国にしても、その反対の経済大国にしても、このセリフは互いのものだ。極端と極端。理想は突き詰めると極端になる。僕は基本的に芸術志向の人間だけれど、あまりにひとつの価値観だけで埋め尽くされるのには反対だ。「分かりやすさ」への安易な流れに抵抗すると同時に、単なる「分かりにくさ」にも反対するだろう。違う価値観との葛藤が無ければ、自分の価値観を深化させることは無理だと思う。 作品自体は読み易かったのだけれど、投げかけられている問題は結構大きく感じられた。
by mwaka71
| 2009-08-08 22:37
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